一番最初に見つけたのは三郎だった。
「おい、あそこにいるのじゃないか」
そう言われて目を向けると確かにがいた。は少し眉を下げた笑顔を浮かべて数人のくのたまの友人と談笑していた。ハチが「はまだ勘右衛門に気付いてないのかな」と呟いた。珍しいな、と。確かにはいつも俺らが気付く前にこちらに気付いて寄ってくる。今日は女の子同士の話に盛り上がっているのだろう。関係ない、そう思って俺が視線をそらそうとした瞬間、がふとこちらを見た。
ばっちり目が合ってしまった。
は『勘ちゃん』と口だけで言って笑顔でひらひらとこちらに手を振る。俺は何か反応を返してやった方がいいのかと片手を上げかけたがその手をハチがにやにやした顔でじっと見ていたから手を数センチ持ち上げたところで止めた。
「振り返してやらないのか、『勘ちゃん』」
むかついたから思いっきり笑顔でに手を振るふりをしたあと、そのまま右手を握り締めて思いっきりハチの腹にめり込ませてやった。
「ぐっは…!勘右衛門いきなり何する、」
「ハチうるさいよ、ちょっと黙って」
「勘右衛門強くなったな…」
そう言ってハチは大げさに地面に倒れこんだ。「俺も人生に一度ぐらいは女の子といちゃいちゃしたかった…」と遺言を残して八左ヱ門は動かなくなった。とりあえずうざかったので足先で突いてみると「勘右衛門ひでぇ!」と起きだした。なんだ、全然元気じゃないか。
ふと視線を戻すとがこちらに走ってくるのが見えた。
「あれ、さんこっち来たの?」
「か、勘ちゃんが私に手振り返してくれた…!」
「ああ、それはハチが、」
「良かったねぇ」
「だからそれはハチが、」
「うん、すっごく嬉しい!」
「俺の話聞けー!」
雷蔵とほのぼの空間を作り出しているにツッコミを入れるとは嬉しいを全身で表現したような動きでくるりと振り返ると、こちらが毒気を抜かれるような笑顔を見せた。
「聞いてるよ?全部分かってるけど、それでも嬉しかったから!」
そう言われて俺はうっと詰まってしまう。すると三郎がすかさず「勘右衛門の負けだな」とボソっと言う。じゃあお前ならこいつに勝てるのかよと思ったが言うのをやめた。三郎ならきっとしれっと『どーいたしまして』とか言って受け流すのだろう。それどころか他の三人でも俺よりは上手くやるところが想像出来て嫌だった。
「ま、頑張れ」
と何故か三郎に肩を叩かれて励まされている。まったくにはペースを崩されっぱなしだ。
視界の端で「、」と兵助が短く呼ぶのが見えた。の耳元でこしょこしょと何か囁いている。どうせ碌でもないことに違いない。そう検討を付けたけれども何だかもやもやした。「えっと…」とが戸惑ったような声を出してその顔がだんだん赤くなっていく。一体兵助は何を言ったんだ。
「気になるのか?」
兵助が俺の視線に気付いてそんなことを言う。
「大丈夫だ、勘の女を取るような真似はしないから安心しろって」
「な…!?」
何言ってんだよという言葉は驚きのあまり出てこなかった。兵助は何真面目な顔で言ってんだよ。なんでもぽかんとこっちを見てるんだよ。ああもう!
「勘右衛門顔真っ赤だぞー」
「う、うるさい!」
「ピュアピュアボーイだねェ」
「勘ちゃん、私は勘ちゃん一筋だから!」
がまた余計な一言を言ってハチが「ひゅーひゅー」とよく分からない盛り上がりをみせる。はでやたら満足そうな顔をしているし。兵助と雷蔵と三郎はそれを少しにやにやしながら見ている。それがすっかり俺の
日常になってしまった。