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「ひばりくん、ひばりくんごめんね」 「さっきから君は何に謝ってるの?」 「私ひばりくんの名前ずっと"田中ヒバリ"だと思ってた」 「…君が何か勘違いしてることは知ってた。それなのに訂正しなかったのは僕だよ」 「それにひばりくんが並中の風紀委員長だってこと知らないで、勝手なこと言ってひばりくん傷つけた」 「知らなかったなら仕方ないよ。それに僕は別に傷ついてないけど」 傷つかなかった、なんて嘘だよ。絶対傷ついてるはずなのに、そうやってひばりくんは私を許してくれる。私は自分が心底情けなかった。 「知らなかった、じゃすまないよ。私、ひばりくんの彼女だったのに、何にも知らなかった」 「何にも?それは誤解だね。君は僕の好きな色とか好きな食べ物とか好きな動物とか、沢山の好きなもの、知ってるだろう?」 「でも、そんなの」 「そんなに僕の好きなものを知っているのはしかいない。君は僕のこと誰よりも知ってるじゃないか」 ひばりくんの好きなもの。好きな色は黒で、好きな食べ物はオムライスで、好きな飲み物は紅茶、果物だったら真っ赤な林檎が好き。好きな動物は鳥で、好きな季節は冬で、夜がすき。自分の通ってる学校がだいすき。あと、ひばりくんの好きなもの、わたし。(それはまだ有効かなぁ) 「名前なんてただの識別記号じゃないか。それに"ひばり"は確実に僕のことを指している、だろ?雲雀は僕の名字だ。間違っちゃいないさ」 「ひばりくんは優しすぎるんだよ…」 私は彼の腕の中で言った。大通りに面していないこの小さな裏門を通る人はいなくて、よかったと思った。この状況は他人に見られると少し、恥ずかしいので。「鬼の風紀委員長なのに?」と笑いを含んだ声。彼の声は耳元で私の鼓膜を揺らす。 「全然ひばりくんは鬼なんかじゃないよ!私今回ので噂は全く当てにならないことを学びました」 「まぁ全部が全くの嘘ってわけでもないんだけどね?」 「ありえないよ、私ひばりくんほど優しいひとを知らないよ」 「僕は君ほどやさしい女の子は知らない」 そう言ってひばりくんが私の頭をなでた。本当の本当に、ひばりくんは優しい。もしひばりくんが冷酷無情な人間だったら私達はきっと、出会ってなかったよ。 「私がひばりくんの彼女でいること、まだ許して、くれますか?」 私まだひばりくんの彼女でいてもいいかなぁ。私はひばりくんのこと大好きだよ。ひばりくんの名前は知らなかったけど、他のこと、たとえばひばりくんの好きなものとかなら沢山知ってる。でもまだまだ私が知らないことが沢山あるはずだから、それを見つけるチャンスが、ほしい。 「そうだね、君が僕のこと"恭弥"って呼んでくれるなら考えてもいいよ」 ひばりくんがいじわるな声で言う。呼んでくれたら、許す。 今まで、私はひばりくん、って名前で呼んでるつもりだったから、恭弥くんって普通に呼べるはずなのに。恥ずかしがることないはずなのに、どうしてだろう、こんなに顔が熱くなる。恭弥くん。特別な言葉みたいだ。いや、実際特別な名前なのだけれど。(私にとって、ね) 頑張れ、私 「きょ、きょうや…くん」 よく出来ました。そう言ってひばりくんは私のおでこにチュってキスをして、そしてその声で「、」と囁くので。私は真っ赤になって、ただ彼に抱きしめられるしか術がなかったのです。 雲雀恭弥、私が世界で一番大好きなひと。 end. |