私は彼に会える放課後が待ち遠しくって、日直が起立・礼!って号令をかける、起立のりのあたりでドアをガラガラと開けて教室を飛び出した。ごめんね日直さん!(あなたは真面目に任務を遂行しようとしていたのに!)



慌てて教室を出たのはいいものの校門には人影がなかった。まだHRが終わったばっかりで帰る生徒もまだ歩いていない。教室の窓から覗いたときも見えなかったけど、やっぱりひばりくんはいなかった。 いや、分かってたけどね。でももしかしたらひばりくんはあの教室から丁度見えない門柱の影にいるのかもしれない、って思ってしまって。 そうだよね、ひばりくんだって学校終わったあとに来るんだから、まだ来ていないんだ。だから私は教室でひばりくんが迎えに来てくれるのをおとなしく待つべきだったのだきっと。それでも飛び出してきてしまったものは仕方がない。私はしばらく門に寄りかかってひばりくんを待ってみたけど3分もするとそわそわしてしまって、じっとしてられなくてうろうろその辺を動き回って。5分後には門を出てしまった。 迎えに来てくれるひばりくんを私も迎えに行こう!早く会いたいなら私からもひばりくんに向かえばいい。もっと早く、会えるよね。

小走りで走りながら必死で彼の姿を目で探す。並盛中ってどっちの方角だっけ?こっちであってたよね多分。でも結局そんなの関係なかった。学校から二つ目の四つ角で彼の姿を見つけた。ひばりくん

「ひばりくん!」

って大きな声で呼ぶと彼は振り向いて。「なんで君がここにいるわけ?」ってちょっと驚いたような顔で言った。(あ、私ひばりくんの驚いた顔って初めて見た!)それから少しムッとしたような顔で言う。

「僕、待っててって言ったよね。もし行き違いになったりしたらどうするの?」

おおう、そこまでは、考えていませんでした。全然、これっぽちも考えてなくて、私が考えているのはひばりくんのことだけだった。早く、ひばりくんに会いたいって。会えないときのことなんて考えていなかった。それは、つまり、絶対会えるって信じて疑わなかったわけで。

「ごめんなさい、」
「別に謝ることじゃないけど」

ひばりくんを怒らせてしまったかもしれない!私が謝ってしまったせいでちょっと気まずい雰囲気になってしまって。私はこういうときどうしていいのか分からなくなった。どうやって、また会話を再開させればいいのか分からなくなってしまった。なにせ、ひばりくんとこんな雰囲気になるのは初めてなもので。 私は半分パニックになっていた。あ頭の中がこんがらがる…!えーっと何話そう?私友達とこうなったときいつもどうしてた? そんなことを考えていたらひばりくんの方が私より先に口を開いた。私の方をちらと見ながら。

「きみは学校で、どんなはなしをするの?」
「学校で?えー普通の話だよ。普通のくだらない話ばっか」
「たとえば?」
「例えば、今日は…。あ、今日は友達が並中のこと話してたよ!」
「並盛の?」

そう言うひばりくんの顔がさっきより少しだけ明るくなったような気がした。「そう。えーっとなんだっけな、最初の方はあんま会話に加わってなかったからよく覚えてないんだけど」何話してたかな…?えっとひばりくんのはなし、はしたけど何だか本人に言うのは恥ずかしいので却下。なんかこう、のろけっぽい話だったような気がするから。っていうか私ひばりくんのこと話すと大体のろけだ!って言われてしまうので、ダメだ。そうじゃなくて、別の話で、

「並中の風紀委員長?の話とか」
「へぇ?」
「その人ヒバリキョウヤっていうらしいけどひばりくんとは大違いだねーとか」
「うん?」
「それでなんかその人ケンカ強くて、友達の彼氏がぼこぼこにされた、とか」
「それで?」
「ひどいよねーって友達が言ってた。ような」
「それ、君はどう思ってるわけ?」
「私?そりゃ、暴力はひどいと思うよ。いきなり殴るのはダメだよ。よくない!最低の行為だよ」
「どんな場合でも?」
「だって悲しむじゃん」

隣のクラスの子だって、彼氏が殴られて悲しんだんだよ。だからダメ。痛いのもよくない。だからダメだよ。ケンカなんかしたら絶対心配して悲しむ人がいるんだから、しちゃダメ。そう言ったらひばりくんは「覚えとく」って小さく言った。ひばりくんケンカすることなんてあるの?

「そりゃ、何かを守るためなら」

何かって何?って聞いたら「秩序とか」って返事が帰ってきた。ちつじょ、か。む、むつかしいな!それにしても秩序を守るために戦うってすごいな。ひばりくんぽいな。もしかしたらひばりくんって将来警察官とか合ってるかもしれない。

「あとは、君。とか」

何かのついでみたいに彼がさらっと言うものだから、危うく私はその言葉の重要性に気付かぬまま流してしまいそうになった。 こんな素敵な言葉聞き逃したら危うく一生後悔するところだったよ