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「好きです」 つい口にしてしまった。もう、後戻りできない。でも元々私と彼の間には何もなかったのだから何も恐れる心配はないのだ。恐れを知らない女の子は無敵だとも思う。 * 「それは何が?」 「あなたのことが、好きです」 多分。と言うと彼は「多分なんだ?」と聞く。多分じゃなくて絶対、と私は言い直した。絶対、好きだ。この気持ちは恋だ。間違いない。恋だ。だって、他のおとこのこを目で探したりとか、会えただけでこんなに嬉しかったりとか、話すだけでこんなに心臓がバクバクいうこととか、ないもん。本当に好きなんだ。もう、恋に落ちてしまった。 「君、なんて名前?」 「東中3年2組です!」 私は勢いよく答えた。張り切り、すぎたかも。中学校と学年クラスとか聞かれてないのに答えちゃったよ。失敗、したかも。でも彼はそんなこと気にする様子もなくて。 。と彼が口の中で反復する。それだけで私の心臓は壊れそうになる。ただ名前を呼ばれただけなのに。間違いなく恋だ。 彼にこうして名前を呼ばれただけで、告白した価値はある、と思った。 もう二度と会わないかもしれないけど、って呼ばれただけで満足だ。ありがとう、"ひばり"くん 「それで、きみは僕にどうしてほしいの?」 「できれば私と付き合ってほしい、です」 できることなら私の彼氏になって、ほしい。でも無理だろうなぁ。だって、こんなかっこいいひと周りの女の子達が放っておくはずがないもん。私だったら絶対放っておかない。きっと、同じ学校に彼女とかいるんだろうな。そんで、彼女は毎日彼に名前呼んでもらえて。(ああすごくうらやましい) 「うん、いいよ」 せめて、同じ学校だったらなぁ。うちの学校も学ランだけど、違うよなぁ。だって、こんなかっこいい人が同じ学校にいて気付かないわけないし。どこ中なんだろう。いいなー同じ学校の人。そうしたら毎日彼のこと見れるのになぁ。他校生の私には絶対ありえな…、って、え? 「…いま、なんて?」 「付き合っても、いいよって言った」 「付き合うって買い物とかではなく?」 「君はそういう意味で言ったわけ?僕は君の彼氏になってもいいって意味で言ったんだけど」 君の彼氏になってもいい。今、そう言った?私の聞き間違いじゃなく、本当に?いや、もしかしたら聞き間違いかも。だって、そんな。聞き間違えじゃなかったら、彼氏になってもいいってそんなまさか、ありえない! 「本当?」 確かめたくて、でも確かめたくなくて。でも結局おずおずと小さな声で尋ねてみた。どうか聞き間違えじゃありませんように、って祈りながら。お願いだよ神様、間違いだったら本当にひどい!彼が口を開くのが怖かった。でもはやく答えが知りたい。 「本当」って彼が言う。聞き間違えじゃなかった。 「退屈させないでね」 もし、人の一生に与えられる幸せの量が決まっているのだとしたら、私いま一生分の幸せを使い切ってしまったかもしれない。 |