あれから七日が経った。もう一週間、早いなぁ。この道でこわいおとこの人に絡まれたのなんか大昔のことみたい。そもそもこんな人通りの多い、普通の道であんな目に合うなんて嘘みたいだ。一体誰が予想するだろう。 それから、あの人に会うことも。夢みたいだったと思う。でも本当にあったことなのだ。彼の顔がチラチラと思い出されて。「雲雀、」と彼が名乗ったときの声、とか。考えると胸がドキドキして、このまま心臓がバーンって破裂しちゃうんじゃないかって心配になるくらい。 これが恋なのかも。 だって、惚れちゃうよ。あんなかっこいい人にピンチを助けられたら、惚れないわけないじゃないか。恋に落ちちゃうよ。決して私が惚れっぽいわけじゃなくて、誰でも恋しちゃうと思うんだ。私は例に漏れなく彼に恋しちゃったわけで。 だから私は今、この道で彼の後ろ姿を探してる。もう一度会えたらなぁ、と思う。 この気持ちとは関係なしに、ただ彼にお礼が言いたいと思った。だって彼はあっという間に去っていってしまったから。それは颯爽ととも言える。私は何も言えなかった。お礼のひとことさえも。そんなの嫌だって思うんだよ。

でもだからと言って期待してるわけじゃあ、ない。この間のあれは一種の奇跡だと思う。出会えたこと。どこの誰だかすら分からない人と再会できるなんて思ってないよ。思ってないから、がっかりしちゃ駄目だ、私。それなのに気付けばもう七日も私はこの道を通ってコンビニに通ってる。ばかだなぁ。コンビニでお菓子買ってさっさと帰ろう。

そう思ったとき、道の向こう側に、見つけた。

黒い髪、黒い学ラン、あの後ろ姿。あの人だ、"雲雀"くん。今度こそ間違いないって。何度か人違いでがっかりしたけれども、今日こそは(そうしていつもがっかりしていることは忘れたふりをする)。 私は走った。待って。これを逃したらもう会えない気がして、私は自分がこんなに走れたのかと驚くぐらい、走った。奇跡は二度も起きないんだってば。

「待って…、」

私の指先が彼の制服の端を掴んだ。彼が振り返る。違う人だったらどうしよう、一瞬不安が脳裏を掠めたけれど、人違いなんかじゃなかった。私の知っている人。知っている顔。その目も知っている。待ち望んだ人。声も。本当にほんもの

「何?」
「あの、私、この間、あなたに助けてもらって」
「ああ、」
「それで、私お礼も言ってなかったから」
「別に大したことじゃないよ。彼らが目障りだったから」
「でも、それでも、私を助けてくれたのはあなただけでした」

ありがとうございました。 私はぺこりと頭をさげて言った。この気持ち伝わればいいな。本当に本当に嬉しかったから。ほんの1%でも伝わればいい。私はこうやって"ありがとう"と言うことしか感謝の気持ちを表す方法を知らないから。

「変わってないね、」

頭を上げると彼が笑っていた。ほんの少しの笑顔。でもたとえほんの少しでも、凛とした彼の周りの空気がほんの少しだけ温かくなったような感じがした。なんていうか、ぱぁとそこだけが華やいだような。私は思わずその表情に見とれてしまった。 うわぁ、笑うとますます美人さんだ。かっこいい。私の心臓はまたドキドキいいだした。どうしよう、私ますます

「すきです」

好きになってしまうよ。 そんな笑顔反則だってば。