「あれ、?どうした?」 なんでこういうときに来るかなぁ?
 

08


それでもまだ私がうずくまってると「大丈夫かー」と言いながら私の背中をさする。大丈夫なんかじゃない。誰のせいだと思ってるんだ。どっか行ってほしいと思って無視したのに、どうして優しくするの?どっか行ってほしいと思ったのにどうして今嬉しいの?目から涙が出ていないのを確認してから、顔を上げるとそこにいたのはやっぱり浜田だった。

「なんで、こんなところにいるのよ」
「上からがいんの見えたから」

さも当然のことのように言った。なんで?私に何か用事があったの?どうして、私のところに来るの?

「もしかして、オレ修羅場に来ちゃった?」

ここに来る途中であの子にでもあったのだろうか?あの子が走っていった方向と浜田が来た方向は一緒だから。それとも窓から見られていたのだろうか。彼は「泉を巡っての三角関係?」なんてへにゃりとした格好悪い笑いを浮かべて言う。サンカクカンケイって何?なんで、そんなこと言うの?本当に無神経だ。ばか。ばか浜田。大好きだこのやろー。なんで私はこんなやつが好きなの?

「多分このあと泉とあの子はくっつくよ」
「は?何言ってんだよ、泉の彼女はだろ?」
「もしかして浜田ってあの泉の幼馴染ちゃんのこと好きだった?あは、失恋だね」

浜田はあの子のことちゃん付けで呼ぶし。もしかして好きなんじゃないの、とか。 あはは、だとしたら私も、失恋だね。私は本当に嫉妬の塊だ。あの子は全然関係ないって分かってるのに。それでも私は苛々する。私は呼び捨てなのに、あの子にはちゃん付けで、それがあの子だけきちんと女の子扱いしてるみたいで苛々する。だからってちゃん付けで呼ばれたいってわけじゃないのに。ただ、浜田が他の子をちゃん付けなんてしないから、特別みたく思ってしまって。私は所詮トモダチなんだって言われてるみたいで。苛々する。

「ちょ、?言ってる意味が分かんねーって」
「私、泉のことなんか好きじゃないもん」

ばっかじゃないの?私からしてみれば浜田のほうが意味分からない。誰が、誰を好きだって?私が好きなのはずっとひとりだけだよ。他のやつなんか目に入らない。朝、早く会いたいなと願うのは。昼、無意識のうちに目で追ってしまうのは。夜、想っては胸締め付けられるのは、全部ひとりのためだ。他の女の子、特に私の知らない人と話しているとどうしようもなく嫉妬してしまうのも、浜田だからだ。同時に、一緒にいるだけですごく幸せな気持ちになれるのも浜田だけだよ。

「私が好きなのは浜田だよ」

ほらね、言えた。あのときも言ってしまえばよかったんだ。雰囲気がどうとか気にしないで、格好悪くたって言ってしまえばよかった。私らしくなかった。覚悟が、足りなかったんだ。言おうと思えばいつだって言えたのに、ね?浜田の様子を窺ってみると、口をぽかんと開けたまま、穴が開くほど私の方を見ていた。私も視線をそらさない。これだけ直球で言ったら今度こそ分かったよね。今度は絶対に、逃がさないから。ねぇ、どうして気付いてくれなかったの?私は何度も頑張ってたのに。浜田の驚いた顔をこれ以上見ていられなくて、涙が出てしまいそうでくるりと後ろを向く。すると手首をがしっと掴まれた。強い力。思わず振り返ると、今度は浜田の真剣な目が待っていた。

「知らなかった。気付かなくて、ごめんな?」

本当は逃げ出してしまいたいくらいだ。意地でも逃げないけど。心臓が不規則に脈打って、足も少し震える。でも、言えただけでいい。知ってもらえただけで、私は嬉しいよ。その先にどんな答えが 待っていたとしても。

(私の恋に気付いてください)