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そのあとどうするかなんて、全然考えてなくて。どうにかなるだろうなんて安易に思っていた。5時間目が始まる直前に戻ってきた浜田の方は絶対に、何があっても見なかった。浜田はすぐに野球部の3人のところに行ってしまったから、私が彼らと会話するチャンスはなかった。泉にメールのこと言う時間もなかった。 07 それでも、放課後とかあるし、と甘く考えていたのがいけなかったのだ。野球部のやつらは放課後のチャイムが鳴ると同時に教室を飛び出して行ったからだ。正確には田島が飛び出し、他の2人が慌ててその後を追ったのだ。こうして私は泉に打ち明けるチャンスを失い、時分でその始末をつけなければならなくなってしまったのだ。行かなきゃ、いけない。じゃないと彼女が傷ついたりするかもしれないから。 「ごめんね、呼び出したのは私なの」 私が校舎裏で待っているとすぐにひとりの女の子がやってきた。一歩踏み出て、とりあえず謝る。彼女は驚いた顔をしている。当然だ、泉がいると思ってやってきたら、待っていたのはこんな知らない女子だったのだから。 「あなた泉の幼馴染よね?」 「そう、ですけど、何で知って、」 「泉から聞いた」 これは半分嘘だ。泉に幼馴染がいることは浜田から聞いたのだから。でも経緯を説明するのは面倒くさかったので適当にそう答えた。大切なのはそんなことじゃない。私が言いたかったのは、 「単刀直入に言うけど、あなた泉のこと好きでしょ」 そう言うと彼女は一瞬言葉に詰まって、小さく「どうして」と聞いた。「あなたを見てればすぐ分かる」と答えた。これは本当。だって、見た瞬間分かった。この子は恋をしてるんだなって。私も他人にはこんな風に見えていたのだろうか。 「好きなら好きって早く伝えなさいよ」 好きとすら言わせてもらえない人だっているのに、と小さく小さく呟いた私の本音は彼女に届いたかどうかは分からない。うらやましい、うらやましい。本当はこんな風に説教じみたこと出来るほど私は偉くない。だけど言葉が止まらなくて、思ってることがそのまま流れ出てしまう。 「好きな人の、すごく近くにいるのにずるいよ」 この言葉はそっくりそのまま私にも帰ってくる。私も浜田のすごく近くにいることには変わりないのに。一緒に過ごした月日はまだ多くはないけれど、トモダチとして学校にいる間はずっと近くにいた。距離的には決して遠くはなかったのだ。ずるい。ずるいのは私。あれからも避けられてるわけじゃないんだから。逃げてたのはむしろ私の方だった。「あなた本当に泉のこと好きなの?」と失礼なことを承知で聞くと、「好き、だよ」と意外にも早く返事が返ってきた。それを、私じゃなくて泉に言いなさいよ。早く言ってあげなよ。 「それを本人に、言わなくてどうするの?」 そう言うと彼女はくるりと背を向け走り去っていった。あの子はこれから想いを伝えに行くのだろうか。泉はあの子のことが大切で大切で仕方ないから、きっとハッピーエンドだ。 何やってるんだろう、私。 さぁ、残された私はどうする? あんなこと威勢よく言っても結局は私も一緒だ。はっきり言ってしまえばいいのに。はぐらかされたって何だって無理矢理言ってしまえば良かったのに。今からでも遅くない。言わせてもらえないと嘆いているだけの私が悪い。本当に伝える決心をしたのなら、あのあとだってチャンスはあったはずだ。チャンスはいくらだって作れたはずなのに。きっとそうしなかったのは覚悟が足りなかったんだ。またはぐらかされたらどうしよう、振られたらどうしようってずっと怯えてた。「好き」このたった一言が言えないなんて。誰もいない今だったら簡単に出てきてくれるのに、どうして本人を前にすると引っ込んでしまうんだろう。情けない。ぎゅっと心臓が握り潰されたみたいに縮んで、痛い。思わず両手で顔を覆い、小さくなる。私らしく、ないなぁ。しばらくそうやって縮こまっていたら、急に影が差して、 「あれ、 ?どうした?」 と、よく知った能天気な声が上から降ってきた。本当にあいつは 空気が読めない。 |