どうしようもなく泣きたくなった。さいあくだ。最悪の結果だ。
 

03


浜田と別れたあと、そのまま家に帰る気分じゃなくて近くのファーストフード店に篭城することにした。ドリンクひとつで粘ること数時間。色んなことを考えすぎて、気持ち悪くなった。友達に話を聞いてもらおうかなって思ったけれど、実は私が浜田を好きなことまだ話していなかったから止めた。最初から説明するのは面倒だし、今の私には辛かったから。なんとなく恥ずかしくて、タイミングもなくて話さなかったのだが、それを今ものすごく後悔している。結局私が話せる相手はひとりしかいなくて。その人物が部活が終わるまでさらに待って呼び出した。泉は私が浜田と帰るところを見ていたらしく来るとすぐに「首尾は?」と聞いてきた。

「だめだった」

こんなことになるなら言わなければ良かったと、思わなかった訳じゃない。これは後悔、なのかな。振られることは考えられたけど、こんな展開は全く予想してなかったから驚いてショックを受けているのかも。拍子抜け?それに近い。けれど、一度散らばってしまった勇気をまた集めるのは至難の業で、気を緩めると今のままでも浜田と一緒にいられるんだからいいんじゃないかという思いが湧いてくる。だから私はそれが嫌だったんだってば。

「言おうとしたらはぐらかされた」
「お前のタイミングが悪かったんじゃね?」
「そうじゃない、と思う」

あのとき私は必死だったから、いくら鈍感な浜田だって気付いたはずなんだ。でもあのとき浜田も単位のことで必死で余裕がなかったせいだったという可能性もなくはない。そこはあまり自信がない。はぐらかされたんじゃないって、そう思いたいのかも。もし、私が友達だと思ってるやつから告白されそうになったらどうするだろう。やっぱりはぐらかしちゃうかな。曖昧な返事をしちゃうかな。

「それで?諦めるの」

諦める?そんなこと、出来るわけないじゃないか。あんなはぐらかされ方されて、そのまま諦めるなんて出来ない。あんな曖昧なことされたからって吹っ切れるもんじゃない。そんなに軽い気持ちじゃないんだよ。そう言うと泉はにやりと笑って「だよな」と言った。そうですよ、私はそんなに諦めのいい女じゃないんです。

「押してだめなら引いて見れば?」
「たとえばどんな?」
「もう浜田と喋らない。浜田だけ露骨にシカトしてみるとか」
「出来る自信ないなぁ」
「別の彼氏作ってみるとか」
「それこそ無理でしょ」

私にそんな技術があるなら、とっくに浜田に使ってるっつの。彼氏作ってみるってアレでしょ、少女漫画とかによくあるやつ。普通に考えて、私には無理でしょ。シカトするのだって難しい。だって、浜田がそばにいたら絶対話しかけたくなっちゃうもん。浜田を見かけたら、真っ先に駆け寄って私の話聞いてほしいって思う。私の方を見てほしい、笑いかけてほしいって思う。普段だって、浜田が他の子と話してるの見るだけで、少し、嫉妬してしまうのに、どうして私が彼を無視できる?

「本当の彼氏じゃなくてさ、彼氏のふりだけとかなら」
「お、当てあんのか?」
「泉」
「ばっか、ありえねー」
「だよね、泉が好きなのは幼馴染の子だもんねー」
「な?!」
「え、うそ当たり?」

適当に言っただけなのに。泉に幼馴染が居ることは知っていたけれど。いつだったか浜田から何かの拍子に聞いたのだ。それを思い出してちょっと言ってみただけで、絶対「はぁ?何言ってんだお前」とものすごい顔で返されるとばかり思っていたのに。予想外だ。真っ赤になって、こっちを睨んでいるけれど全く怖くない。

「何で知ってんだよ」
「分かりやすすぎですよ」

得意になってそう言うとぴしゃりと「嘘だろ」と言われた。あ、ばれましたか?にやにやしていると平常心を取り戻した泉が「とにかく!」と言って立ち上がった。

「諦める気がないなら、次はちゃんとタイミング計れよ」 

私は諦める気、ないよ。だから、今回のは私のタイミングが悪かった、そういうことにしてしまおうと思った。本当にそうなのかどうか、真相は浜田じゃないと分からないけど、少しぐらい自分の都合の良いように解釈しちゃっても構わないよね? 最悪と嘆くにはまだ早い。