始まりの鐘を鳴らせ
 

01


立ち上がると彼の背が高いのがよく分かる。それに対して少し子どもっぽい笑顔。金色の髪がふわふわ揺れているのは天然なのかなぁとか思いながら、お弁当の包みを開いてさっそくおかずをひとつ口の中に放り込む。

さ、浜田のこと好きだろ」

昼休み、他の3人が購買に行ってしまって、私と泉が2人きりのときあいつが唐突にそう言うもんだから、私は飲んでいたお茶を盛大に噴いてしまった。しかもそれが図星だったりしたから。

「うわ、きったねぇな!」
「ななな何で」
「お前分かりやすすぎ」

「今だってお前浜田目で追ってたし」そんなつもりはなかったのに。私はあの3人をぼんやり見ているつもりだった。そりゃ頭の中では彼のことを考えてはいたけれど。そんなに分かりやすかっただろうか。いつも彼と一緒にいる泉たち3人と同じ態度をとってたつもりだったし、他のクラスメートとなんら変わりはなかったはずなのに、なんでばれてしまったんだろう。しかもよりによって3人の中で一番性格悪そうなこいつに。

「安心しろ、浜田は気づいてねーよ。鈍いから」

そう言って泉はパックの牛乳をズズズと音を立てて飲んだ。一体どうして気付かれてしまったのか、泉を注意深く見てみるけれど、分からない。だって、こいつ人の色恋沙汰なんてどうでもいいって顔してるのに。なんでなんでなんで。本人に、気付かれてないのは良かったけれど。もし本人にもばれていて、私だけうまく隠し通しているつもりだったら恥ずかしすぎる。消えてしまいたいたくなる。まぁ浜田は見るからに鈍そうだから油断していたのも、ある。本人に気付かれていないならそれでいいと、私はそう思うべきだろうか。

「言ってみれば?全く脈ないってわけじゃなさそうだし」

案外オーケーもらえるかもよ?って、そんな適当な。泉の言葉は信用出来ない。分かってるのに、泉が顔に引っ付けた意味深な笑顔がどうしても引っかかって。そういえば、泉は浜田と同中で帰りの方向も一緒なんだよなぁと思い出した。何か、本当に知っているのだろうか?「ちょっと、泉どういうこと?」とまさに詰め寄ろうとした瞬間にガラガラと勢いよく教室の扉が開き、

「たっだいまー」

と丁度いいタイミングで浜田たちが帰ってきた。今の話を聞かれていなかったかどうか私は焦っていたのだけれど、当の本人はにこにこといつもと変わらない笑顔を貼り付けている。ドアが開く音がした瞬間に口を閉じたから、大丈夫だよね?私たちが座ってる席は廊下から近くないし、大丈夫。聞こえてたら田島辺りが真っ先に食いついてきそうだし。大丈夫大丈夫。

ー、見てこれ、自販でなんかいつも見ないの売ってたから買ってみた」
「あーはいはい、よかったねー」
「反応薄いなー。頼めばひとくちあげてもいいよ」
「いらない」

もらえるわけないじゃないか。きっと田島や三橋や泉のだったら遠慮なくもらう。でも浜田は無理。私は浜田のこと、ただの友達だとは 思ってないんだから。