「僕は、あなたのことが好きです」

 ふたりきりの部屋の中に彼の言葉が落ちる。私が彼の方を見ると、一拍遅れて彼が顔を上げ、目が合う。

「は? はああああああ!?」

 思わず大きな声が出た。自分が思っていたよりも大きくて自分でもびっくりしたけれど、彼は私の声に驚く様子もなく、じっとこちらを見ている。

「ら、ラファウくんが私を!?」
「あは、冗談ですよ。真に受けました?」

 そう言って彼が手をひらひらと振る。

「じょ、じょうだん……」

 彼の言葉を一音ずつ噛み締めるように言葉にする。その言葉の意味を私がやっと理解するまで、彼は表情を変えずにこにこと人好きのする笑顔を顔面に張り付けていた。

「趣味が悪い!」
「あなたはそれをとっくに知っていると思っていましたが」

 彼が見た目通りの性格をしていないことは知っていた。周りから言われるほどの良い子ではないことも。こうして私をからかったり、いたずらしてみたり。年相応と言えばそうなのかもしれないけれど。でも、その姿を知っているのはどうやら私だけらしい。以前、養父にはこんなことしないと言っていたから。

「一瞬で顔が真っ赤になって面白かったな」
「年上をからかわないで!」
「それはすみません」

 全く悪びれる様子なく言う。言葉に心がこもっていない。咎めるようにじとりと睨むと、目が合った彼が目を細めて微笑む。

「どうしても言いたくなってしまって」

 いたずら心を抑えられなかった言い訳なのだろうけれど、何だかそれ以外の含みがあるように聞こえた。親愛か、恋情か。冗談と言っても、彼が私に何らかのプラスの感情を持っているのは確かだろう。出なければ、わざわざ会いに来るなんて無駄なこと、彼がするはずがないのだから。
 窓から差し込む光がラファウくんの頬をやわらかく照らしている。少しだけ伏せた視線。そこから視線を上げてこちらを見る彼のまつ毛が、陽の光を浴びて瞬いたように見えた。

「本当にあなたは面白い人だなぁ」
「今日はやけにからかうわね?」

 一言で言えば、しつこい。これまでのラファウくんはこちらをからかってもすぐに引くというか、言葉を選ばずに言えばすぐにこちらに対する興味を失っているように見えた。それなのに、今日は。

「そうですか? 今日は気分が良いからかな」

 そう言って彼が笑う。気分が悪いよりは良い方がいいだろう。今日は天気も良くて、陽の光はあたたかく、風も爽やかで心地良い。

「わたしもラファウくんのことが好きよ」

 こちらも思いを言葉にすれば、彼は目を丸くさせる。そのあとふわりとやわらかく微笑んで「ありがとう」と言った。

2025.04.30