※2018ハロウィン ゴーストパロ


「えい!」
「アイタッ!」

ゴーストに触ることが出来るとは思っていなかったので、突き出した人差し指は存外深くまで彼の頬に刺さってしまった。その白くて丸い体の半分くらいまでめり込んでしまったような気さえする。

「ご、ごめん……」

慌てて指を引っ込めたのだけれど、一見血が出ているとか、へこんでいるとかそういったことがなくて少しだけ安心する。栄吾くんは自分でも不思議そうにその部分をさすっていた。

「驚いて思わず声を上げてしまいましたが、私に痛みはありませんのでお気になさらず」
「痛くないの?」
「どうやら痛覚というものがないようですね」

仮にもゴーストなのだから、そういうものなのかもしれない。彼にとってもそれは新しい発見だったらしく、私の指先に自ら当たりに来ている。トントンと体当たりするその動きがおかしくて、もう一度つんつんと彼を突いてみる。今度は刺してしまわないよう、慎重に。

彼に触れると何だか不思議な感覚がする。慣れない感じだけれども、ひやりとするとかそういう嫌な感じは一切ない。しかし、他の物体を触っているときとは明らかに違う感覚がするのだ。それが面白くて、つい犬猫と同じ気持ちで頭や体を撫でてしまった。

「ふふ」

そう彼が息を零して身をよじる。
「ごめん、嫌だった?」と尋ねると、「いやじゃありません」と彼が答える。けれども、その言葉とは反対に、彼は私の手の中から抜け出そうとしているように思えた。

「なんだかくすぐったくて」
「そういう感覚はあるんだ?」

痛覚がないのだから、てっきり全体的に感覚が乏しいのだと思っていた。逆にそう言われると面白くなってしまって、脇腹あたりをわざとくすぐるように撫でると、また彼が手のひらから逃げる。

「いえ、厳密に言えばないのですが。きみに触れられていると思うと、なぜだか落ち着かない心地なのです」

その言葉に今まで無遠慮に触れていたのが何だか恥ずかしくなって、パッと手を離す。すると、なぜか今度は彼の方から体をすり寄せてくる。

まるで甘えるような仕草で、彼にそうされると何だかこちらまでむずむずと落ち着かない気持ちがするのだった。

2018.11.05