※2018ハロウィン ゴーストパロ


「つかまえたっ!」

ふよふよと風に流されて漂っていた栄吾くんを後ろからぎゅむっと掴むと、「おや」と驚いた声が手の中の白くて丸いものから聞こえた。

初めはゴーストに触ることが出来るだなんて思っていなかったのだけれど、案外出来ることは多いらしい。彼の体をしっかり握りしめると、触っているという感覚はあるのだけれど、熱くもなく、冷たくもなく、不思議な感覚だった。でも、決して嫌な感じではない。

ひっくり返して顔を覗き込むと、栄吾くんはぱちくりと瞬きしていた。ゴーストの姿では色々と勝手が違うからか、何が起こったのかよく分かっていなかったらしい。

「つかまってしまいました」

彼はそう言ったが、やはりその声からはいまいち危機感が感じられなかった。町内をあちこち探しても見つからなくて、あとちょっとで本当に行方不明になってしまうところだったのに。――やはり私がきちんと栄吾くんの面倒を見なければ。

そう使命感に燃えていると、手の中で彼が何やら小刻みに動いていた。

何事かと思ってよく見ると、「ふふ」と栄吾くんが小さな体を震わせて笑っていた。ゴーストの姿になっても表情はきちんと分かるのだからおもしろい。

「どうしたの?」
「いえ、どこかで聞いたことのあるようなやり取りだなと思いまして」

そう言って、栄吾くんがころころと笑う。それに今度は私が瞬きを繰り返す番だった。

しばらくしてから、彼の言っているのが砂浜の波打ち際でカップルがやる、あのやり取りのことだと気が付いた。つかまえたとか、つかまったとか。私は真剣に栄吾くんを探していて、そんなつもりはまったくなかったのに。

「今度はきちんと砂浜でやりますか」

何故か乗り気な栄吾くんに 「やらないよっ!」と言うのと同時に、自分の顔が真っ赤になっていくのが分かった。

そんな私を見て栄吾くんがまた笑うので、またついぎゅむぎゅむと彼を握る力を強くしてしまった。

2018.11.05