a スマイル0円!



「綱吉!ねぇ、つなよしー!!」

道の前方を歩く彼の背中に声を掛ける。走りながら名前を呼び続けると彼はやっとのっそりと振り返ってか…」って呟いた。か、って何よ。悪かったね私で!そう言い返してやろうかと思ったけれどふと気付いてやめる。君がなんだか元気がないことに。

「綱吉、何かあったの?元気ないよ目が死んでるよ」
「あーまぁね」
「本当にテンション低っ!悩み事かなんか?」
「あーまぁな」
「綱吉に悩みとかあるんだ?」
「何気失礼だな!オレにだって悩みぐらい…」

まぁ、綱吉はお人よしで心配性だから悩みは尽きないんだろうなぁ。他人なお悩みまで背負って苦労してそうだ。その君の言うその悩みが何なのか知らないけど。私には想像がつかない。はぁ、ってため息付く彼は割と見慣れた光景だけれども、私と一緒にいる時には顔しないでほしいよ。どうにかしたいって思ってしまうじゃないか。

「どうしたの、お姉さんに話してごらん」
「こんな姉貴嫌だなぁ」
「うるさい!そんなところ突っ込まなくてもいいの!いいから言ってごらんなさい」
「いや、いいよ。に言ったってどうしようもないし」
「まぁ…そりゃそうかもしれないけどさ」

私じゃ役に立たないかもしれない。そんなこと私が一番よく分かってるよ。だけど、それでもどうにかしたいと思うの。何もしないでいるのは嫌だって。少しでも君の役に立ちたいんだ。支えたい。いつも私は綱吉に与えてもらってばかりいるから。君は私が落ち込んでいる時はいつも黙って話を聞いてくれたりするから。せめて同じことを君に返したい。ねぇ、。私は君が肩を落として歩く姿なんて見たくないんだよ。君には笑っててほしいって思うんだよ。そんなのきっと私のエゴでしかないのだけれど。そうして私は君がいつか言ってくれた言葉を口にする。

「人に話すだけで楽になるかもしれないよ。言いたくないなら言わなくてもいいけど、」
「うーん」
「とりあえず、ハンバーガーでも奢ってあげるからさ」

そう言ったならたちまち綱吉の顔が明るくなった。「マジで?」おいおい、現金な奴だなぁ。別にいいけれど。私にできることってこれくらいしかないから。何の直接的な問題の解決に役立つことはできないけれど。こんなことで君の気分が晴れるのなら。何度でもしようじゃないか。

「その代わり、私が落ち込んでる時には同じことしてよね!」

私がそう言うと綱吉は笑った。ふわり、私の心があたたかくなるような笑顔だ。この笑顔だけですべてがうまくいくんじゃないかって思うくらいの。綱吉が笑ってるだけで世界がやさしくなるよきっと。私はこういう時、ああ君が好きだなと思うのだ。ずっと隣で君の笑顔を眺めていたいと。そして君には世界の終わりまで笑っていてほしいと願うのだ。まるで悪戯っ子のように無邪気な笑顔で君は言った。

が落ち込むことなんてあんの?」

そりゃありますとも!例えばさっきみたいにきみが元気ないときとか。私はきみに何があったのか心配して心配して悲しみが伝染してしまうよ。ねぇ。さっきだってあほっぽい会話していたけど心の中はブルーだったんだよ。きみに元気になってほしいからの空元気。だから私はきみにいつでも笑っていてほしいんだよ?そのためにはなんだってするよ。(今の私にはこれくらいしかできないけど)

「なんか笑ってるの顔見てたら元気出てきた」

悩んでもしかたないよな!って彼はまた世界を輝かせた。やっぱり彼からは悲しみだけでなく喜びまでも伝染するらしい。私は何もできない役立たずな女の子だけれども、君が元気になってくれるのならいつでもいつまでも笑っていようと思う。
 

Smile¥0! 
(私の笑顔でいいならいくらでも君にあげるよ)

(061008)