元々、リズムゲームは得意だった。悪魔学校に入学してからは遊戯師団に入ろうと決めていた。ここで最強になるのだと。現実はそんなに甘くなかったけど、今の生活も悪くない。そう、悪くないのだ。

「リード! 今日も勝負しよ!」
「また〜? 別にいいけどさ」

 彼との勝負は七対三くらいで私が勝ち越してる。リードはゲーム全般のセンスがあって何でも得意だけれども、私はリズムゲームばかりやり込んでいるおかげで勝てている。でも、ちょっと気を抜けば彼にすぐ追い抜かされてしまう。――それが、スリルがあって楽しい。

「じゃあ、師団室行こ! それとも今日は気分を変えて裏庭とか?」
「おっ、ナイスアイデア! 天気良いし、外でやるのもいいね!」

 携帯ゲーム機はどこでも出来るのが良い。さりげなくふたりきりになれる場所を提案することが出来た。

「……でもさ、なんで僕なの? この前クラスに音ゲー上手いやつ見つけたって言ってなかった? そいつに頼めば?」

 他の誰かに頼むなんて、そんなこと考えたこともなかった。確かにそんな話をリードにした記憶はある。遊戯師団にほしいくらい上手かったけれども、でもそれだけだ。そもそもゲームが上手い悪魔なら遊戯師団に他にも沢山いるわけで。

「私は、リードがいいの!」

 ――ちょっとは気付け、バカ。私はゲームが上手い人が良いんじゃなくて、リードが好きだってこと。
 ゲーム仲間とか遊戯師団の同期とかライバルとかそういう関係に隠しているけれど、本当はリードに恋してる。
 リードは私の気持ちに気付かないどころか女の子として意識してもくれていないみたいだけど。

「そ、そっかぁ〜。まぁ僕も君と勝負するのは楽しいからいいけどね!」

 そう言ってリードが笑う。私といるのが楽しいと言ってもらえただけで心臓がドキドキと騒がしくなる。私は多分彼に嫌われてはいなくて、多分彼と一番仲の良い女の子だとは思う。あとちょっと、あとちょっとだと思うのに。

「ほら、そんなことより早く行こ!」

 勇気を出してリードの手を掴んで引っ張る。あれだけはっきり言って、大胆に手を握っているのだからそろそろ気付いてくれたっていいのに! リードは「そんなに引っ張らないでよ」なんて呑気に言うのだ。私の頬が真っ赤で振り向けないから、リードが今どんな表情をしているのか知らないけれど。

「〜〜っ!」

 自分から繋いだくせに、手のひらが熱い。
 ……リズムゲームでは勝てても、こっちはずっと負けっぱなしな気がする。

2021.08.09