「遅いわ」
「いい加減にしろ」
街灯の上に立って、ようやくやってきた退治人を見下ろす。銀の髪に水色の瞳、赤い衣――目当ての人物がやってきてくれたことに私はにこりと口角を上げた。今の私は歌い出しそうなくらい機嫌が良い。
「そんな言葉で止めるくらいだったら最初からやらないわ」
私はそんな愚かではない。これでしか私のほしいものは手に入らないのだ。
「ほら、早くしないと私がこの街を壊滅させてしまうかもしれないわよ?」
私の言葉に彼が顔を歪めて鋭く睨んでくる。でも、まだ足りない。
軽く足元を蹴って、ふわりと彼の前へ下りる。
「あなたの銀の弾丸で私の心臓を止めてほしいの」
以前向けられた銃に込められていたのは麻酔弾だったけれど、もしそれが本物の弾丸だったなら。彼はきっと、もっと強い眼差しで――
「あなたのその瞳が好きなの」
彼の、獲物を撃ち抜くその瞬間の瞳が忘れられない。どんな宝石よりも綺麗で、混じり気なく透き通っていて、強い光を持っていた。
すばやく銃を引き抜いて構え、まっすぐに相手を見据えて引き金を引く。彼に銃口を向けられたときの、ぞくりと背筋を駆け上がる快楽のような興奮が忘れられない。
彼の頬をするりと撫でる。彼は体を固くしたまま動かなかった。
「早く私を殺してね」
私はもう一度あの瞳を向けられたい。
2021.03.29