金曜日の夜。私は新横浜ハイボールに入り浸り、ジンジャーエール片手に机に突っ伏して溶けていた。

「今日もいい感じに溶けてんな」
「マリア……」

 今日の退治が終わって帰ってきたのか先程までは姿の見えなかったマリアがジョッキを持って立っていた。
 別に特別何があったってわけじゃないけど、何もなくても一週間過ごせば疲れる。疲れるのだ。
 のろのろと上半身を起こすと、マリアがニッと眩しい笑顔をこちらへ向ける。

「え〜〜ん、マリア〜〜」
「おお、どうした?」

 彼女に抱きつくと、まだ事情も分からないうちからとりあえずよしよしと頭を撫でてくれる。マリアやさしい……。
 そんな彼女に甘えてさらにぐりぐりと頭を押し付けた。彼女のお腹は腹筋で固い。

「家に帰りたくないよ〜〜。マリア、パジャマパーティーしよ〜」
「いいぜ。ウチ来るか?」
「うわ、丹沢山中はちゃめちゃに遠い……。でも行く」

 丹沢までってここから何時間くらいかかるんだっけ? 電車は一時間ちょっとくらい? でもそこから先が長い。何せ山の中だ。仮に行きは良いとしても帰りのことを考えると大分気が重いが、先のことは都合よく忘れることにした。
 どうせ明日も明後日も休みだし! どうせ予定なんかありはしないんだし!

「じゃあ荷物取ってきな」
「やったー! マリアだーいすきっ!」

 両手を上げて喜ぶとマリアも一緒に笑ってくれる。
 そうと決まればお菓子とジュースを買いに行かなくちゃ。彼女にだけ聞いてほしい話も沢山ある。これからのことを考えてにやける口元を押さえていると、マリアが頭を撫でてくれた。
 今夜は良い夜になりそうだ。

2021.10.22