「ドラルクさん、好きです」
私の一世一代の大告白。もう当たって砕けろという気持ちだった。この恋心を自覚してからこの想いは日に日に大きくなっていって、もうこれ以上は私ひとりでは抱えきれなくなってしまった。これ以上隠し切れる自信もなくて、何かの拍子にぽろりと零してしまったりするよりはきちんと伝えてしまった方がいいと思ったのだ。
わざわざ彼を呼び出した小洒落たカフェの窓辺の席に向かいあって座りながら、そうして必死で伝えた告白だったのだけれど。
「うん」
彼は普段と変わらない気軽さで返事をするものだから拍子抜けしてしまった。――もっと驚くとか、慌てるとかするものだと思っていたのに。
「いや、君が私に好意を寄せているのは見て分かっていたから」
「えっ、私そんなに分かりやすかったですか?」
「うん」
思わず頬に手を当てる。確かにドラルクさんに会うときは嬉しくてつい笑顔になってしまっている自覚はあった。でも、そんなに言われるほどあからさまな態度をとったつもりはなかったのに。
バレていないと思っていた今までの自分の行動を振り返って恥ずかしくなる。目の前に置かれたカフェオレの入ったカップを両手できゅっと握る。じわりじわりとカップのあたたかさが指先に移る。
「それで、君は私にどうしてほしいの?」
予想外の問いかけに思わず顔を上げた。
「私は君の口から、君の言葉で聞きたい」
私はとにかく彼に自分の気持ちを伝えることしか考えてなかった。とにかく伝えて、この胸にいっぱいになってしまったものを少し軽くしたかっただけだった。
でも、その先の希望も口にしていいのなら――
「付き合ってほしい、です」
「いいよ」
思ったよりも軽い返事がきた。
私の気持ちを伝えた時点で断られなかったから、もしかしてと期待はしていたけれど。
「いい、んですか……?」
「そうじゃなきゃわざわざ呼び出しに応じたりしないよ」
バッサリ振るためとかもあるじゃないかと言いたかったけれど、彼がこちらを見つめてくるので何も言えなくなってしまった。
そっか、彼は私がふたりで会いたいと誘ったときから分かっていたのか。
「あの、ドラルクさんは私のことどう思ってるんですか!?」
もうこの機会だから全部聞いてしまえと思った。
「ドラルクさんの口から聞きたいです」
先ほど彼が言った言葉と似たようなことを返す。意趣返しというわけじゃなくて、ただまだ現実が信じられないから言葉がほしかった。
顔が熱い。それでも彼から視線を逸らしたくなくて、じっと見つめる。彼は驚いたように一度ゆっくりと瞬きをしたあと、ふっと口元をゆるめた。
「ふふ、いいよ」
彼の目が細められる。彼が不意に見せるこのやさしい表情が、私は世界で一番好きだった。
「私も君が好きだ」
2021.11.28